セットプレーに特化した書籍
セットプレーを一言で定義するならば「試合の中のもう一つの試合」ということになる。
ルールが覆る「もう一つの試合」
この書籍は全208ページにわたるセットプレー専門書です。
サッカーのセットプレーのみに焦点を当て、コーナーキックやフリーキックを中心に、その戦略・戦術・個人技術について書かれています。
セットプレーの重要性は高いことはみんなわかっているはずなのに、その戦術はなぜか30年前からほとんど変わっていないそうです。
本書は「なぜセットプレーが十分に研究・練習がされないのか」「どのように準備・練習すればセットプレーの得点率を上げられるのか」について本質的なことが書かれています。
セットプレーを「試合の中のもう一つの試合」と捉えて、セットプレーの組み立て方やその理論が分かります。
筆者について
著者はジョバンニ・ビオというイタリア人です。
少年時代からサッカー選手を志していましたが、半月板を痛めていたこともありプロの道を諦め銀行員に。
その後、コーチングライセンスを取得し、仕事の後にアマチュアクラブでコーチを20数年務めました。
そこで得た知識や経験を本にして出版したところ当時レッドスター・ベオグラード(セルビア)の監督を務めていたワルテル・ゼンガから声がかかりセットプレー専門コーチとしてのキャリアをスタートしました。
2020年のUEFA EUROではイタリア代表のセットプレーコーチを務め、大会優勝に貢献しました。
下記の記事内でもジョバンニ・ビオについて触れられています。
この書籍でわかること
わかることは以下の通りです。
セットプレーの重要性
これは言われなくても感覚的にわかる方も多いのではないでしょうか。
研究によるとセットプレーはチームの全ゴールのおよそ30%を占めるそうです。
セットプレーの得点を上げることは年間15〜20得点するストライカーがいるのと同じ効果があるのです。
また、戦力の拮抗するチーム同士の対戦や上位対決、ワールドカップなどの短期決戦ではセットプレーの得点で勝敗が決まることも少なくありません。
セットプレーは力を入れて強化する部分であることがよくわかりますね。
なぜセットプレーは進化しないのか
セットプレーが重要なことはわかりました。
しかし、戦術の改革者であるグアルディオラ(現マンチェスターシティ監督)のチームでさえ、セットプレーに関しては30年前のセットプレーと本質的には変わらないそうです。
では、なぜセットプレーは進化しないのでしょうか。
理由は以下の3点です。
- セットプレーの戦術について十分な知識とアイデアがなく、またそれを教えるメソッドも持っていないこと
- 練習時の優先順位が低いため、過密日程では練習時間が取れないこと
- 最終的には個人の技術によるところが大きいこと
近年様々な戦術研究が行われ、5レーンや偽9番・偽サイドバックのように新しい戦い方が生まれていますが、セットプレーに関してはそうではありません。
熱心に研究する専門家がいないことが原因のようです。
セットプレーを専門にする指導者自体が少ないことも原因になるかもしれません。
また、各リーグの上位チームは複数の大会に参加しているため週に2〜3試合をこなさなければなりません。
試合の間隔が数日しかない中で対戦相手に合わせた対策をしていかなければならないため、セットプレーよりも先にやるべきことが優先されてしまいます。
さらにセットプレーの得点率を上げる手段はたくさんありますが、それはチームが抱える選手や監督の特徴によって決まります。
どんなに優れた作戦を持っていても最終的に得点することができるかは個人の技術によるところが大きいのです。
どれだけ準備しても良いクロスが上がらなければゴールにはなりません。
どれだけ良いクロスが上がってもアタッカーがミスをしてはゴールになりません。
そこにセットプレーの限界があるようです。
セットプレーの組み立て方
セットプレーは戦略・戦術・技術の3つのセクションに分かれます。
戦略…選手の配置を決め、相手の対応を確認する。
セットプレーはボールや選手の位置などが固定されていることが多いため、事前の準備が可能です。
特にコーナーキックは常に同じ状態からのスタートで100%攻撃側が主導権を握れるため作戦が立てやすいです。
選手の配置で相手の対応を確認、または相手を混乱させることが可能です。
戦術…ボールが蹴り出されるまでの動きだしで、相手を混乱させる。
ボールが蹴られるまで、または蹴られた後の動きだしで自分達に有利な状況を作ります。
大切なのは、本命アタッカーがシュートを打てるスペースを作ることとタイミングよくポジションを取ることです。
チームによって所属する選手の特徴は異なります。
ヘディングの得意な選手や動きだしでスペースを使うのがうまい選手など特徴に合わせて作戦を練る必要があります。
技術…良いクロスを入れる、シュートを打つなど
最後は各選手の技術です。これは各選手が個人でレベルアップするしかありません。
ACミラン時代、本田圭佑選手は全体練習後に必ずセットプレーの練習をしていたそうです。
試合でもコーナーキックやフリーキックを蹴っていましたが、単純にチーム内で一番キックが上手かったからと書かれていました。
改めて能力の高い選手だったことがわかりますね。
まとめ
今回のまとめは以下の通りです。
- セットプレーで得点できることはもう1人ストライカーがいるのと同じ。
- セットプレーの研究がされないのは十分なメソッドがなく、優先順位も低いから。
- セットプレーは戦略・戦術・技術の3つに分けられる。
- 大切なのはアタッカーが適切なタイミングでスペースを使うこと。
本書の中にはさらに細かくセットプレーごとの大切なポイントが書かれています。
それらについてはまた別の機会にまとめたいと思います。
興味を持たれた方は是非読んでみてください。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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